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元警視庁捜査一課刑事

「古村靖尚様」× ワクセル

元警視庁捜査一課刑事「古村靖尚様」×ワクセル.jpg

元警視庁捜査一課刑事、古村靖尚さんにインタビューさせていただきました。

 

捜査一課は殺人強盗暴行傷害誘拐、立てこもり、性犯罪放火などの凶悪犯罪を扱う部署であり、古村さんは数々の凶悪事件と向き合ってこられました。

 

現在は被害立証をサポートする古村事務所を運営され、事件の被害者に親身に寄り添っておられます。

 

今回は古村さんの経験や知識をもとに、インターネットやSNSを通じた発信について注意すべき点などをうかがいました。

 

インターネットが普及し便利になった反面、簡単に情報発信、ひいては批判や中傷もできてしまう世の中になりました。自分自身が気づかない間に加害者や被害者にならないために、ぜひ最後までご覧ください。

「表現の自由」や「言論の自由」に付随する責任を意識する

インタビュアー)今はSNSを利用して誰でも自由に情報発信できるようになりましたが、情報発信するときに気をつけるべきことはありますか?

古村さん)日本では「表現の自由」「言論の自由」「信教の自由」は当然の人権として、憲法で保障されています。

しかし、憲法で守られた「表現の自由」を行使するにあたり、現在の通信技術の発達が弊害にもなっています。SNS等が日常であまりにも簡単に使える道具になったことで、自分が行使している「表現の自由」や「言論の自由」に付随する責任をあまり意識しなくなってきたのだと思います。

ときどき報道されるSNSに絡んだ悲しいニュースは、このような意識の希薄さが原因になっていると思います。

当然、悲しいニュースが報道されるということは、悲しい目にあった人や誰かを悲しい目にあわせた人がいることを意味します。

 

万が一、誰かを悲しい目にあわせたのがあなただった場合、あなたに自覚がなくても、あなたは刑事から『ホシ』と呼ばれて捜査されることになります。

 

そうならないために、他人に関する意見・情報を発信しようと思ったときは、送信ボタンを押す前に一度立ち止まっていただきたいと思います。

 

誰かを傷つけてしまわないように、あなたが『ホシ』にならないために、情報を発信する前に、一瞬立ち止まって考える。あなたが発信する言葉の先には、生身の人間がいます。人間は、身体も心も傷つきやすい存在です。正当な理由もなく人に傷つけられたならば、それは「被害」です。被害は災害や戦争のように突然やってきます。

 

『ホシ』は漢字で『犯人』と書きます。たった今、被害は突然やってくると言いましたが、実は『犯人』にとっても刑事は突然やってきます。

 

なぜなら、通信事件の捜査は時間がかかるからです。憲法の大原則で守られた「通信の秘密」という権利の壁、国外のプロバイダ等の法的な壁、日々進歩する技術の壁を、少しづつ積み重ねた証拠をもとに、1つ1つクリアして刑事は逮捕状まで辿りつきます。

 

そのころには犯人自身、自分がした行為を忘れているかもしれません。SNSでいとも簡単にできた行為だから、記憶に残らないのです。

 

情報を発信するときは「発信する先に生身の人間がいる」という事実をお忘れなく。

つい批判しただけでも、犯罪者になる可能性がある

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インタビュアー)つい批判してしまったり、批判に同調してしまうこともあると思いますが、その場合の処罰などはありますか?

古村さん)「つい」とか「勢いで同調」は、日常ありがちなことだと思います。

あなたの行為を、被害者が被害にあったと認識したら、それは当事者にとって事件です。被害者が警察に被害の相談に行ったときから、この事件を警察が認識することになります。事件の捜査は事件の存在を警察が認知したところから始まります。

 

まず「被害者の相談、届出により発生した結果、被害であったか否か」「その被害が刑事罰のある法令に触れるか否か」を検討します。そして、法令に触れると判断した場合、行為と結果から何罪にあたるのかが吟味されます。

 

警察では、これを擬律判断といいます。質問にあるような「批判や、批判への同調」は刑法に該当するとなると

 

・名誉毀損、侮辱(名誉に対する罪)

・信用毀損、業務妨害(信用及び業務に対する罪)

 

等にあたる可能性があります。

 

罪にあたるとすると、次は「誰がしたことなのか」という点に焦点があたります。

 

「つい」してしまった批判や「同調」は、ほかの誰でもないあなたがしたことなのです。

 

刑罰法令は、思っただけの「内心」を罰することはありませんが、「行為」とそれによって発生した「結果」(なかには未遂でも)を罰します。

 

ただ、殺人や傷害、暴行といった身体に対する犯行と違い、名誉、侮辱などの概念、意識に対する犯行は、犯罪として成立するかどうかの段階から評価がわかれます。さらに生活、年齢、環境、境遇、立場、それらから生じる価値観などの要素が大きく関係し、行為と結果に対する評価も違ってくるものであります。

 

それゆえ、発生した事案の内容を個々に具体的に検討することが重要で、1つの事例を挙げてイメージ化するのは危険だと思います。

 

ここでは、関係するだろう刑罰法令のそれぞれの罰則をあげて、皆さんの注意喚起に代えたいと思います。

 

・名誉毀損:3年以下の懲役若しくは禁固、50万円以下の罰金

・侮辱:拘留又は科料

・信用毀損:3年以下の懲役、50万円以下の罰金

・業務妨害:同上

 

となっており、起訴となって罰金以上(正確には科料以上)の処分を受ければ前科一犯となります。

 

注意していただきたいのは、事業を起こすにあたって必要になってくる公的な資格や許可の中には、個人であれば本人、法人であれば役員に、過去○年以内に前科がある場合は不可とされるものもある、ということです。

 

これからさまざまな事業や、起業に取り組んでいかれるだろう若い世代の皆様には「つい」や「勢いでの同調」で、前科者にならないように注意していただきたいと思います。

 

SNSの手軽さに油断することなく「自分の発言には責任をもつ」という意識が大切だと思います。

被害にあったときは1人で抱え込まず、相談する

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インタビュアー)自分の身を守るためにはどうするのが良いのでしょうか?

古村さん)まずは相談することが大事です。どうしたらいいのか分からないまま、泣き寝入りしている方もたくさん見てきました。

 

悪質な場合、被害者と認定され、事件にできるケースもあります。特に仕事や生活に支障をきたすような場合、しっかりと正面から向き合って対策を練ることが必要です。

 

被害を受けた場合は必ず証拠を残してください。証拠を元に、1つ1つ確認しながら刑事は逮捕状まで辿りつきます。専門的なことも多いので、元刑事としてお役にたてることがあれば幸いです。

インタビュアー)夜道や人気のないところで女性が暴行を受けるというニュースも耳にしますが、

具体的にはどう気をつけたら良いでしょうか?

 

古村さん)性犯罪は絶対検挙すべき目標として、指定重点犯罪に認定されています。

 

犯罪は犯人側に主導権があります。事件を起こす時間、場所、人も犯人が自由に選択します。少なくとも犯行の時点で、兵法にいう必勝の法則『天の時、地の利』は犯人側が選択してしまいます。

 

被害者が常に、奇襲、不意打ちを受けざるを得ないのはこのためです。

 

『犯罪』、言い換えれば『悪』に強さがあるとするならば、このためなのです。『内心』を現在の法律では罰せられない以上、100%犯罪を防げないのはそのためです。

 

ただ、災害や戦争と同じ様に、備えることは可能です。

 

性犯罪の根絶は、犯罪を根絶するのと同義であり、悪と正義の根源的な問題でもありますので、また何かの機会にお話しできればと思います。

自分の発言に責任をもつ

インタビュアー)最後にメッセージをお願いします。

古村さん)古い概念ではあるかもしれませんが

 

「自分がこれから発信する言葉に、自分は責任がもてるのか」

「自分がこれから言うことで発生する結果に、自分は落とし前がつけられるのか」

 

ということが大事だと思います。因果は応報であります。

 

インタビュアー)長い時間ありがとうございました。